なずな日記

2020.05.24

ソラマメ事件

ソラマメ事件

外出自粛で、以前なら毎日のように行っていた買い物にも、最近は3日に一度くらいにしようと努力しています。買い物好きな私には、ちょっと苦しい。

お店の方も新聞の折り込み広告をやめて、なるべくお客さんが自粛しやすい雰囲気を作っているようですね。

 

スーパーに行くと、買い忘れのないように、メモを見ながら買い物をしている人が増えたみたい。

これはいい!と、私もメモしてから買い物に行くことにしました。でも、メモをすると、メモなんか見なくても、買うものを憶えていて、メモしていないと忘れてしまうというのは、なんという皮肉!

 

先日もスーパーに行って来ました。スーパーではまず野菜売り場から始まるのがお約束ですが、その片隅に、ソラマメがあるのに気づきました。

 

もうソラマメの季節か。

 

女性はサツマイモやカボチャが好きですが、男性はソラマメや枝豆が好きな人が多いと思います。おいちゃんもそうでした。

 

私はおいちゃんと行った、房総の旅行を思い出しました。

 

やはり5月のうららかな日でした。おいちゃんと私は、房総の、とある海辺の観光地に一泊旅行に行きました。

5月の房総は、初夏と言っていいような、汗ばむような気候です。海の青さもきれいですが、木々の緑にも目を奪われます。

宿の無料の貸自転車で、近辺を回ることにしました。フロントに置いてあった地図を持って、山の上の神社をお参りしたり、岬の灯台を見に行ったりしました。その道すがら、道の駅を見付けたのです。

こんな所はおいちゃんも私も大好きです。買う買わないは別として、見ているだけでも楽しくなるのです。

土地の名産品が、所狭しと並んでいます。キャベツや大根が、信じられないくらい安い値段で売っています。

「おいちゃん、こんな大きな大根が100円だって!」

しかし、こんな大物は、いくら安くても持って行くのが大変なので、泣く泣く買うのを諦めました。

 

その時、おいちゃんの足が、とある場所で止まりました。

「俺、これが欲しい」

おいちゃんが指さした先に、ソラマメがありました。

「ふ~ん、ソラマメか」

値段も安くて新鮮そう。これ、いいね。二人でそんなことを話し合っていましたが、私は買うなら明日の方がいいと思いました。

「ねえ、帰るのは明日だから、明日またここに来た方が良くない?」

「なくなったらどうするんだよ」

「明日の分は明日また来るわよ」

と言うことで、ソラマメを買うのは明日と言うことにしました。

 

宿に帰ると、大浴場で汗を流し、持ち込みのビールを飲んで、夕食会場に向かいました。海の近くだから魚が新鮮。それに主婦は、自分で動かなくても、食事が出てくるのは、何よりありがたい。

 

そして翌日。朝風呂に入って朝食をゆっくり食べて、チェックアウトをしてから、件の道の駅に向かいました。

いそいそとソラマメのあった所に向かうと、なんと!

「ソラマメがない!」

「やっぱりないじゃないか!!昨日買えばよかったのに!あ~、ソラマメ!ソラマメ!」

そこでは何も買わず、手ぶらで家路に着きました。

 

その日の夕食に、ソラマメを出したかどうか?でも、たぶんスーパーで買って、出したんじゃないかな?

そんなことを思い出し、現実に帰った私は、ソラマメを一袋、買って帰ったのでした。

 

その日の夕食。

テーブルの上にはおいちゃんの写真。

「おいちゃん、ソラマメを買って来たよ」

レンジでチンしたソラマメを、おいちゃんの前に置きました。

缶ビールを開けて、こくこくと飲む。う~ん、今日も元気だ、ビールがうまい。

おいちゃんの前の、ソラマメをつまむ。

 

「おいちゃん、今年初めてのソラマメだね」

 

おいちゃんがいたときは、ソラマメはおいちゃんが主に食べていましたが、今は私だけが食べています。一人の夕食はもう、慣れたし、一人は気楽、と思うことも、多くなったけれど。

 

「おいちゃん、ソラマメ食べに、こっちに戻っておいでよ」

 

おいちゃんが、テーブルの上で微笑んでいる。

Books

私の葬式心得

本書は、自分を「おくられ上手」に、また家族を「おくり上手」にする一冊として、これからの「理想的なお葬式」のあり方を提案していきます。
株式会社SAKURA 代表取締役 近藤卓司著「わたしの葬式心得」幻冬舎出版より発売中です。アマゾンで好評価5つ星。

ご葬儀のご相談は24時間365日

0120-81-4444