納棺師が綴る『故人カルテ』
2016.10.05
おくりびとの想い~
楽な姿勢で。ゆっくりとやすんでいただきたい。
微笑んでいるような、いつものお顔でいていただきたい。
やっと長雨も去り、秋晴れがみられるようになりました。
スーパーには、サンマや栗、銀杏、サツマイモ、秋の味覚が並んでいます。
食べ過ぎて太らないよう気を付けなければなりません。
ホラー映画の幽霊が色白であるように、亡くなられるとお顔の色が白っぽくなってしまうことは、多くの方がご存じのことかと思います。
では、顔の赤みはどこに消えてしまったのでしょう。
顔色が良い・悪いを「血色 けっしょく」という言葉を使って表現します。
文字通り、血液の色が顔の赤みの正体です。
血管が広がったり、縮まったりするため、肌に透けて見える面積が変わり、顔色が変わります。
また、血液の成分である赤血球に含まれるヘモグロビンという血色素の状態にも起因します。
酸素と結合しているときは、鮮やかな赤い色をし、酸素を放出すると暗い赤い色になります。
興奮して顔が赤くなる現象も、唇や顔が青紫色に見える現象も、血管の拡散収縮や血色素の状態によって現れます。
亡くなられると、心臓の拍動はなくなり、血液の循環が停止します。
流れが止まると赤血球は、重力によって沈殿し始めます。
仰向きになっているため、亡くなられて数十分のうちに、顔から赤みが引いて、白っぽくなってきます。
その背部へ貯留した赤血球によって現れるのが「死斑 しはん」です。
頭や耳、首の裏、背中側の色合いが赤くなってきます。
時間が経つにつれて、赤血球は壊れ、血色素が流れ出し、皮膚組織へ浸透します。
その時の血色素は、酸素と結合していない状態なので、暗赤色です。
薄い赤色だった背部は、時間とともに濃く暗い赤い色に変わります。
お棺へお連れすると、背部が見えなくなるため、ほとんどの方が死斑は気にならないと思います。
ただし、ふくよかな体型であった場合は例外です。
ふくよかな方が横になった際、顔より胸の位置がかなり高い位置にあたります。
自身の重みも相まって、血液は重力に逆らうことなく低い位置の顔側へ流れます。
顔がうっ血する状況です。
従って、死斑は背部だけで済まない場合があります。
男性であってもファンデーションを塗って隠さなければならないこともあります。
費用の関係で体型にあったお棺へお連れしない場合、その傾向は高まります。
そのようにならないためにも、その方に合ったサイズのお棺を選ぶことは、故人の尊厳を守るために必要だと思います。
故人のカルテ12 お身体の負担を考えたお棺の選び方 その①
⇒http://sougi-sakura.com/blog/makeup/coffin_1/
血色がなくなり白っぽくなったお顔も、死斑を隠すためファンデーションを塗ったお顔も、チークの様子で雰囲気がガラリと変わります。
病院やホームで施されるエンゼルメイクに多い、頬だけ異常に赤い、不自然なチークはいたしません。
元気な時のお顔はそんな不自然な様子ではありませんから。
上気した頬はほんのり赤く、笑顔を彷彿させます。
頬だけではなく、皮膚の薄いところや、耳、眉、顎先にも血色を足してさしあげます。
そっと笑いかけているような、自然な色合いになるように。
亡くなられた方のお化粧は、元気な時のお化粧とは、施す意義から異なります。
ご処置を行い、お顔元の様子を整えて行うラストメイクは、男性も女性も関係なく、故人の尊厳とご家族の笑顔のために行っています。
【故人のカルテ】血色と死斑のポイント
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